PTAの会計業務はPTA活動にどのように役立っているのか?

PTAには様々な活動がある中で、会計担当者のお仕事はもちろん会計業務を行うことです。PTAの会計業務とは、主に日々の入出金の記録予算と実績の管理決算報告書の作成の3つに分けられます。これらの会計担当者の業務が、PTAの活動にどのように役立っているのかは、外から見てわかりにくいですし、実のところ業務を行なっている本人も理解していないことが少なくありません。

そこで、なぜこれらの業務が必要で、どのようにPTA活動に役立っているのかを解説したいと思います。

日々の入出金の記録

PTAの会計担当者の基本的な業務は、日々の入出金の記録を行うことです。誰かがPTA活動のためにお金を使った(立替払いをした)ら、その支出の請求書や領収書が会計担当者に提出されます。会計担当者は支出の内容をチェックした上で帳簿に記録し、立替払いの場合には立替てくれた人に実費相当分のお金を渡します(立替払いの精算を行います)。

ここでは支出を例に話を進めていますが、一般的に、このような支出の帳簿への記録と精算は支出が実際に起こった日の近くで行われます。遅くとも支出が生じた月の月末(や翌月末)までに記録と精算を行うことが望ましいです。

なぜ、適時に帳簿記録と精算を行う必要があるのでしょうか?それは、資金残高の把握異常な支出を早期に発見するためです。

  • 資金残高の把握を適時に行うことは、財政の健全化のために必要不可欠です。資金残高を把握するために最も簡単な方法は銀行の残高を確認することですが、これは今いくら・・・・あるかを示すだけで、会員が立替をしている支出は反映されていません。仮に立替が多額で、数ヶ月分をまとめて精算するような場合には一時的に資金が不足したり、予算を超過した想定外の多額の支出が生じると精算ができなくなる可能性があります。適時に記帳、立替経費の精算を行うことで資金残高を把握することで、不測の資金不足を回避することができます。
  • 異常な支出を早期に発見するためには日々の一つ一つの入出金に注意をすることが大切です。異常な支出とは、使徒が不明な支出、活動規模に見合わない多額な支出、普段支出をしない相手先に対する支出などがありますし、たまに報道されるような私的な使い込みや学校が負担すべき経費への流用も含まれます。異常な支出に気づきPTAの資金を不正な利用から守ることは、会員からのPTA活動に対する信頼の獲得につながります。

異常な支出を見極めることは難しいですが、以下のチェックポイントを意識して記帳業務を行うことで気づける可能性が高まります。ぜひ役立てて頂けると嬉しいです。

  • 支出の承認は行われているか?:支出に対して役員(会長、副会長等)や各種委員会の委員長による承認を行うような内部ルール(内部統制)がある場合には、正しく承認が行われているか確認をしましょう。
  • 予算の範囲内の支出であるか?:予算との整合性をチェックしましょう。予算を超える支出や、予算にない支出である場合には、なぜその支出が必要であったのか実際に支出をした人や、委員長や会長・副会長等の管理者に確認をしましょう。
  • 実際の活動に紐づいたものか?:文具や飲み物代などの少額な支出は私的に利用されやすいです。その飲み物代はいつ・どんな活動の際に・誰に対して提供したのか、文具は使った後どのように保管されているのか(使用後はPTAの備品として管理されているか)などを確認しましょう。
  • 実際に支出があった日からだいぶ時間が経って清算が行われたものか?:特に年度決算の忙しい時期に古い経費をまとめて持ってこられた場合には要注意です。会計担当者が忙しくチェックが甘くなることを見通して不正な支出を紛れ込ませる可能性が高まります。会計担当者だけでチェックが追いつかない場合には、他の役員にサポートを頼むなどチェックに漏れが生じないようにしましょう。

予算と実績の管理

日々の入出金をまとめると収入と支出の実績(収支実績)がわかります。収支実績は月次や年次で把握した上で、予算と比較し予算の超過(予算を超えた収入や支出)や予算に対して過少(予算よりも少ない収入や支出)となっているかをチェックすることが必要です。

予算と実績をチェックすることはなぜ必要なのでしょうか?主に、資金が効率的に使われているかを確かめるため、想定していない支出のチェックを行うため、そして次年度以降の予算編成に役立てるために、予算と実績のチェックが必要なのです。

  • 資金が効率的に使われているかを確かめるとは、PTAが有している資金を各活動に必要十分な量で配分できているかをチェックするということです。ある活動で資金が多く使われた場合には、他の活動で使う予定であった資金を減らす必要があるかもしれません。反対に、ある活動の資金が余った場合には、その資金を他の活動に振り返ることでより良い活動につながる可能性があります。有限な資金を各PTAの諸活動に適切に振り分けられているかのチェックを行い、より良い資金の使い道を判断していくために、収支実績を予算と比較することが必要です。
  • 想定していない支出のチェックを行うことは、不適切な支出を防ぐために重要です。日々の入出金の記録においても予算との整合性をチェックしますが、支出が全体として予算の範囲内に収まっているかをチェックすることも大切です。特に少額な支出が数多くある場合には、個々の取引レベルでは少額なので予算超過をあまり気にしていなくても、積み上げてみると予算の上限近くであったり、予算を超えていたりもします。改めて支出がPTA活動のために必要な内容であるかをチェックするために予算との整合性を確認することが必要です。
  • 次年度以降の予算編成に役立てるために収支実績との比較を利用できます。予算は前年度予算を踏襲する(同じ金額にしておく)というような団体もあるかと思います。しかし、予算はPTA活動の資金的な根拠であることから、実際の支出を見積もってなるべく差が生じないように設定することが必要です。活動内容に大きな変更がない場合には、当年度の予算と支出実績を比較し、予算が不足している活動は予算を増やし、反対に予算が余っている活動に対しては予算を減らすなど調整を行います。そうすることで、より実態にあった予算を作成することができ、次年度の予算による統制(予算の観点から実際の支出が妥当かを判断すること)をより有効なものとすることができます

決算報告書の作成

PTA活動では、予算を根拠として会員から資金を集めます。つまり「こういう活動にいくら使うので、会員の皆さんで分担して、一人いくら会費を払ってください」と会員にお願いをすることで会費収入を得ることができます。

さて、集めた資金は、使って終わりで良いでしょうか?そんなことはありません。会員は自分たちが出したお金がちゃんと予定通り使われているか気になるでしょう。この会員の疑問に答えるために年間の収支実績と予算を比較した決算報告書を作成します。

では、決算報告書は会員が自分の出した資金がきちんと使われているかをチェックするためだけに利用するのでしょうか?もちろん違います。決算報告書はPTAが活動を継続するために不可欠なものです。なぜなら、決算報告書を作成し会員に会計報告を行うことで、翌年度の活動資金を集めることができるからです。

  • 会計報告を行うことは、会員に対して資金の管理状況や使い道を説明し、会員から信頼を得ることにつながります。信頼のない団体には資金が集まりません。特にPTAは任意団体であり、入会・退会は個人の自由です1。資金の使途を報告できない状態では会員を維持することはできず、活動に必要となる会費を集めることもできなくなります。会員からの信頼獲得のために会計報告が必要であり、会計報告を行うための基礎となる資料が決算報告書です。決算報告書には、集めた資金を適切に管理したこと、資金を集める根拠である予算の通りに使用したこと、予算を超えた支出が生じた原因、予算ほど資金を使わなかった原因などを、表形式(収支計算書など)や文章で会員に報告することになります。
  • 翌年度の資金を集めることで、PTA活動を継続することができます。活動資金を集めるためには翌年度の予算を会員から承認をしてもらう必要があります。翌年度予算は、会計報告を通じて当年度の予算と実績の差を明らかにした上で、その差をどのように反映したのかを説明する必要があります。つまり、決算報告書は翌年度予算の根拠となるのです

PTA会計担当者の仕事は、日々の入出金の記録、予算と実績の管理、決算報告書の作成など、目立たず地味な作業が多いです。しかし、これら会計担当者の全ての仕事は、会員からPTA活動に対する信頼を獲得するため、そしてPTA活動を継続するために必要不可欠なものです。ぜひここで解説した内容を意識して業務を行い、PTA組織の運営に貢献してください。

  1. https://zen-p.net/spta/pta13.html#gsc.tab=0
    (一般社団法人 全国PTA連絡協議会HPより 2024/03/04 13:40閲覧) ↩︎

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